アーチル療育セミナー参加報告


基調講演「地域で育ち、地域で暮らす」
 姫路市総合福祉通園センター・ルネス花北所長 宮田広善氏(医師)はアーチル設立時より関与。

1「障害」の捉え方と支援の在り方… 現在は「国際生活機能分類ICF)」による障害の捉え方が一般的。環境や社会が本人に適応していないので障害となるのであって、したがって改善も可能となる。ICFの影響もあり本人を改善する医療モデルから環境を変えて暮らしやすくする社会モデルへ転換してきている。

2「障害」を映画・著書から考える… 映画「My Left Foot」から治療することは絶対的なものではなく、既存の能力を活かす(左足で絵を描く)ことで人々を感動させることもできることを紹介。映画「I am Sam」からは7歳レベルの知的障害を伴う自閉症者ではあるが、それ以上に「父親」「地域で暮らす人」である。他者が障害者と決め付けることはできないことを…。映画「Malcom X」からは「黒人」は「白人の尺度」でしかなく、「黒人」であることに誇りを持つ視点が大切というテーマから「障害者」は「健常者」の尺度でしかなく「障害のある人(その支援者)」も自らの違いを社会に認めさせる姿勢への転換が必要と…。調査報告“みんなが手話で話した島”から遺伝的に耳の不自由な人が多いマーサーズヴィンヤード島では、日常的に手話を併用する文化があり「障害」にはなっていない。「社会への適応」ではなく「社会の適応」を考えることを紹介した。

3療育を再考する… 療育は①保育機能②相談機能③リハビリテーション機能④診療機能で構成される。療育は子供が生まれ持った力を活かすための援助であり、目標は成人期の「自立」にある。自立とは働くことだけでなく行動に責任を負い,生活を主体的に選択し実践できることと述べた。

障害者自立支援法下の障害児療育… 「受益者負担の発生」という観点からのみ障害者自立支援法を批判する立場は弱い。障害のある人と家族の「自己選択の制限」や「地域生活支援の限界性」の観点から制度設計を提案していくことが必要等と提言された。

シンポジウム「誰もが安心して暮らせる地域へ〜私たちにできること〜」
 保護者を代表して目黒久美子氏は、障害児を抱えた家族の苦悩がアーチル等の活動に参加することで救われた想いや,障害児も社会にさらされてこそ社会と繋がっていくことを体験したと発表した。
 グループゆう代表中村祥子氏は、障がいや高齢者の枠を超えた共生の地域づくりを目指し、「あったらいいな」のサービス(①配食サービス②助け合い③サロン活動④「ピーターパン」での活動⑤精神ヘルプサービス)を生み出し続けている活動を発表した。

 障害の捉え方を再考する良い機会であった。また、家族の声を直に聞くことは大変胸に響く重みがあった。(E)