日本障害フォーラム(JDF)セミナー「障害者権利条約―新しい権利の時代に向かって」報告

中野サンプラザ


 平成18年12月8日(金)中野サンプラザにて標記セミナーへ参加した。

 「日本障害フォーラム(JDF)は国内の主だった13の障害者団体・関係団体で構成され、3周年を迎えた。国連活動に対応し、今年は①条約推進活動,②アジア太平洋障害者の10年(タイでエースキャンプ)活動,③精神科病院敷地内施設反対運動を行ってきた。
 今後は、条約批准後の国内法の改定運動をしていく。


基調講演「障害者権利条約の成立にあたって」
1外務省総合外交政策局人権人道課 鈴木誉里子(政府代表団)
 国連本部にてH18.8.14〜8.25の第8回会合(4年間)で基本合意に達し、12.13〜12.15で国連総会で採択され、国会承認を経て批准される予定。この条約は障害者への権利条約を新たに定めるものではなく、B規約等(女性差別撤廃条約、児童権利条約)に基づき現状を是正できるよう定められた。必要に応じて制度改正(インクルーシブ教育の導入など)もある。
2東俊裕弁護士 (JDFから代表団へ参加)
 各国の妥協案によるコンセンサス(セカンドベスト)であり、障害者にとって最低限の条約である。始めて障害者団体を代表団に加え、条約の基本合意できたことに大きな意義がある。今後は積極的に国内法の改正・制定に向け活動していく。


セミナー1「障害者権利条約 その評価と到達点」
 今までの条例は障害者・福祉関係者のみで作ったのが成功しなかった一因。千葉県では公募により住民が委員となり日常生活での差別事例を集めた。多くの議論を生んだが、結束を強めた。条例制定の結果より、情報公開し議論した経過が重要だった。(高梨)
 条約というスタンダードを示したこと,当事者参加型であったことに注目した。世界的にメディアの取り扱いが低かった。自立支援法の時は当事者運動を取り上げたように、各団体の一致した見解が必要。今後は、関係者への紙面解説も必要と感じている。(三宅)
 批准に大切なことは①翻訳の仕方。政府訳だけでなく民間訳も取り上げる必要がある。「アクセシビティー」「インクルージョン」をどう訳すか。②実質的な批准になること。子供権利条約は3年掛かって批准し、国内法改正もなく失敗だったと思う。(喜多)
 条約内容を高く評価している。差別概念として「合理的配慮」を謳ったのが新しい。締約国の義務に沿って改正されていくか国内外の監視が必要。(金)


 障害者が保護の対象から権利を強く主張する時代に変わり、当事者参加型の活動が求められている。その中で多くの議論が結束と有効性を生むとの話が印象的であった。
 今後は条約批准により精神保健福祉法などの国内法改正にも影響していくものと考える。